齊藤 節子さん(せっちゃんのエクスぺリヤンスの家の女将さん)

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わのまんまは、たんだの家庭料理だっきゃ。
青森県弘前市出身。せっちゃんのエクスぺリヤンスの家の女将さん。
鰺ヶ沢のグリーンツーリズムグループの食事担当を経て、平成22年に、エクスぺリヤンスの家を農家民宿として独立。津軽の地料理にこだわったおもてなしを行っている。2014年には「せっちゃんデー」として鰺ヶ沢の食を首都圏に届けるイベントにチャレンジの予定。

あじたまレインボウの虹の架け橋の向こう側、鰺ヶ沢町駅のそばに知る人ぞ知る農家民宿「せっちゃんのエクスペリヤンスの家」がある。
季節の山菜、地の野菜、地の魚、保存食などをつかった手作り田舎料理が楽しめるほか、さまざまな体験メニューを持っているリピーター続出の小さなお宿だ。
女将(おかみ)である齊藤節子さんの名前をとって、せっちゃんのという冠詞がつく。エクスペリヤンスというのはexperienceのフランス語読みだ。津軽弁のイントネーションが、フランス語の鼻の奥に抜けるような柔らかさをに似ているというのは良く言われる。experienceは「体験」という意味だ。
せっちゃんの農家民宿は、農業体験もできるけれど、いわゆる旅荘という感じでもないし、鯵ヶ沢の駅の中心部にあるので、農家という感じでもない。せっちゃんのお宅には猫が3匹飼われていて、部屋の中を自由に歩いている。まるで親戚の家に遊びにきた感覚だ。

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親戚のお宅に遊びに来たような気取らない感覚が心地よい
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猫たちも一緒におもてなし?
新鮮な海と山の幸をふんだんに使ったお料理

誰もがハマるせっちゃん流おもてなしのユニークな魅力

しかし、私の知る限り、せっちゃんの家に泊まったお客さんは100%リピーターになる。100%でないにしても心情的には100%そう思っていると思う。
いったい何が魅力なのか。ひとつには、せっちゃんの家の料理が郷土の家庭料理と新鮮な海の幸で尽くされており、派手ではないけれど、農家民宿に客が求めるニーズに合致しているのだと思う。
せっちゃんは、「わの料理っこは、なんも郷土料理とかでねぇ、たんだの昔からの家庭料理だっきゃ」と謙遜する。確かに、それらはせっちゃんにとっては特別でないのかもしれない。しかし、「旬」と「地のもの」であることをとても大切にして提供される家庭料理は、他では決して味わえないという希少性としみじみとした美味しさで来客を満足させている。

それだけではない。実はもうひとつの魅力は、せっちゃんのおしゃべりがとても愉しいこと。せっちゃんの家は、食事をする場所と、食事を作る場所が同じ部屋にある。(民家だからあたりまえかも知れないけれど)せっちゃんは食事をつくりつつも、いつもお客さんとの会話に反応している。また、食べる前にはひとつずつ料理の説明をする。せっちゃんの家にくると、肩の力を抜ける良さと、会話が愉しさがついてくるのだ。

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おしゃべりしつつ、お料理をしつつ、説明しつつ、 自然体なせっちゃんのおもてなしスタイル
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お父さんの釣った魚をせっちゃんが料理、とても息の合ったご夫婦

さらにもうひとつ魅力がある。旦那さんの存在だ。ご主人の衛さんは、大の釣り好き。せっちゃんの家の食事には必ず魚料理が出るが、その調達はほぼ衛さんが前日または当日につり上げた魚を材料とする。普段は静かにテレビを見ているか新聞に目を落としているが、魚の話や山の話しになると、すっと会話に入って、土地の人ならではの蘊蓄を話してくれる。ゴニンカンという津軽独特のトランプゲームを懇切丁寧に教えてくださったり、そんな二人のコンビネーションが絶妙で、エクスぺリヤンスの家では会話が絶える事がない。

エクスペリヤンスの家に至るまでの道

今回インタビューという事ではじめて、せっちゃんという人の歴史にほんの少し触れた気がする。謙遜も含んでだと思うが、決して豊かな家で育ったわけではないという。学校を卒業したらすぐに理容院に住み込んで3年程、さらに結婚をして鰺ヶ沢に嫁いでから美容院で10年程働いたそうだ。最初の3年は丁稚奉公のようなものだろうか。ここにエクスペリヤンスの家の人気の秘密が隠されているのかもしれない。せっちゃんはお客さんと話す事が本当に楽しそうだ。この本当に楽しそうであることが来客にとっての居心地を何倍にもよくしているように思う。心から迎えられていることが本当の安心感につながる。美容院時代の接客の日々はまさにその修行の場になっていたのだろう。せっちゃんのヘアスタイルがいつも美容院にいってきたばかりのように、美しくスタイリングされているのはそういうわけであったのだ。本来であればその腕を活かして美容院を開いているはずの人生だったろう。しかし、せっちゃんは、いま、農家民宿の女将として活き活きと働いている。なぜ、美容の道を歩まなかったのか。それは美容師が免許制の仕事だからだ。免許がないと人の身体に触れてはいけない決まりがある。それでせっちゃんは別の道を歩む事になった。

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器用な所もお客を和ませる笑顔も過去の経験の賜物
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全ての経験が天職、エクスペリヤンスの家のおかみさんに結びついていた

人生の転機

しかし、いきなり農家民宿に転身したわけではない。人生、なにがどう繋がるかわからないものだ。せっちゃんが農家民宿の世界に足を踏み込んだきっかけは、8年程前、鯵ヶ沢の海の駅「わんど」という農産海産物直売所のレジ打ちのバイトをしていたときのこと。最初は子育ての傍ら、いろいろと都合のよいパートとして働いただ。しかしこれがただのバイトではおわらなかった。

ちょうど、グリーンツーリズムというものが注目を浴びはじめていた頃だ。「わんど」は鰺ヶ沢町の観光協会直轄の農産海産物直売所で、観光と近しい関係にあり、「グリーンツーリズム」という言葉と出会った。好奇心のかたまりのせっちゃんは、知らない言葉を聞くと気になって仕方がない。農業体験が旅行のメニューになるというのだ。そこでせっちゃんは開眼する。農家民泊では郷土料理を出す事が好まれるという事で、それらの勉強会がはじまった。せっちゃんもそのグループに参加して料理担当となり、そもそものせっちゃんが育ったお宅のレシピの他にさまざまな料理のバリエーションを身につけていった。

丁度時を同じくして、せっちゃんは、現あじたまの主宰者の白戸さんと出会う。白戸さんが鯵ヶ沢の魅力を伝えようと、「つがるつながりツーリズム」と銘打って東京から人を連れてき始めたとき、地元の野菜をつかった料理の作り手が求められた。その時に、料理を提供したのがせっちゃんだった。
白戸さん一行が褒めに褒めた。もちろんお世辞ではなく心から。せっちゃんにしてみたらそこまで褒められるのは驚きだったというが、それでもこんなに喜んでもらえるのなら・・・。と、せっちゃんがグリーンツーリズムの宿を開こうと決めたのはそれも大きな要因になったようだ。
折しも、ご主人の衛さんが役場の仕事から引退する時が重なり、二人で農家民宿を始める事をきめた。

せっちゃんの接客がとても上手いのは理美容院での研鑽の賜物かもしれない。しかし、なによりせっちゃんの接客が自然で温かいのは、彼女の好奇心の大きさが影響していると思う。せっちゃんは言う。「お客さんの話しっこ聞くのが、ホントに愉しいんだ。いろんなお客さんが来て、いろんな話しが聞けて、愉しくて仕方ないのさ」。
本当に愉しそうに話しを聞いてくれるなんて、都会人にとってどれほど心地よいサービスだろう。それを意図せずに楽しむからこそ、リピーターが絶えないのだろう。せっちゃんも、衛さんもお客さんが喜ぶのが大好きだ。ついつい、一品サービスしてしまうそうだ。もともと極めてリーズナブルな料金設定にもかかわらす、ついついのサービス。決して儲かってはいないかもしれないけれど、せっちゃんの家も、予約が取れないことも増えてきた。人儲けができているんだなぁと思う。
かくいう私もせっちゃんの大ファンだ。このたびのインタビューを通じてもさらにその魅力に触れた気がする。機会あって鰺ヶ沢を訪問される方がおられたら、まず一泊はこちらに宿泊されることをおすすめしたい。

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津軽つながりツーリズム主宰の白戸さんとの出会い
【せっちゃんのエクスぺリヤンスの家】
1泊2食付 大人 6,500円(平成25年4月~)

山、川、海の幸の食膳に温泉サービスあり。

オプションとして、無化学肥料の農業体験、ノンオイル・ノンバターケーキとパンの手づくり体験、紙粘土壁掛け人形色付け体験、廃材を利用した布ぞうり作り、新聞エコバッグ作り、川・海釣り体験などの企画も用意されている。

住所: 青森県西津軽郡鯵ヶ沢町大字舞戸町字上富田86
電話: 0173-72-3745(要予約)
FAX: 0173-72-3745
EMAIL: mei_madoka@yahoo.co.jp

せっちゃんの台所(せっちゃん流の味付けレシピ集)